「雨樋ってどうして勾配がついてるんだろう」
「雨樋の勾配を調整する方法を知りたい」
上記のように考えてはいませんか。
雨樋が傾いていることにふと気づき「修理しなきゃいけないのかな」と思う方も少なくないでしょう。
ですが雨樋には勾配が必要であり、少し傾いている状態が適切なのです。
この記事では、以下の内容に触れながら雨樋の勾配について解説します。
・雨樋に勾配がついている理由
・雨樋の勾配の目安
・雨樋の勾配を調整する方法
上記を把握することで、雨樋を最適な状態に保ちやすくなるでしょう。
雨樋とは、屋根の上に降った雨水を集めて地面まで排水するための設備です。
雨樋を構成している部位は、次の3つのパーツに分けられます。
・軒樋
・集水器
・縦樋
雨が降ると、屋根の傾斜に沿って雨水が地面に向かって流れます。
その雨水を最初に受け止めるのが、「軒樋」と呼ばれるパーツです。
軒樋は、雨水を残さず受け止めるために、屋根の縁に沿って取り付けられています。
軒樋に流れた雨水は、「集水器」と呼ばれるパーツに流れていきます。
集水器は、軒樋と縦樋を中継するパーツです。
集水器から縦樋に流れた雨水は、下方向に落ちて地面に排出されます。
屋根の上に降った雨水を地面までまとめて流すことが、雨樋の役割です。
雨樋に勾配がついているのは、溜まった雨水がスムーズに流れるようにするためです。
雨樋から上手に排水されずに水があふれると、本来の役割を果たせません。
雨水が勢いよくこぼれて地面が凹む、外壁を流れて外壁材を劣化させるなどの弊害が考えられます。
雨樋から水があふれたせいで家の基礎や外壁にダメージが蓄積すると、大規模な修繕が必要になることもあるでしょう。
雨水があふれることなく排水されるようにして家を守ることが、雨樋に勾配をつけて設置する目的です。
雨樋の勾配は10メートルあたり3〜5センチメートル程度が目安です。
とはいえ、水が流れ落ちていく集水器(あんこう)の周辺のほうが水位は自然と低くなるもの。
勾配をつけなくても問題なく水が流れると判断すれば、雨樋を水平に設置することもあります。
水平〜集水器の方向に少し傾いている程度だと、見ただけでは施工不良や損傷かどうかの判断がすぐにはできません。
やや違和感があっても、水があふれるなどの不具合がなければ様子見で問題ないでしょう。
ただし、雨樋が集水器と逆の方向に傾いている、勾配が急すぎるといった場合は早めの修理をおすすめします。
勾配が逆方向についていると、水が集水器に流れ込まず排水できません。
また勾配が急すぎると、集水器に水が集まりすぎて排水のペースを超え、あふれてしまう可能性があります。
雨樋の勾配がきちんととられていない原因には、主に以下の2つが考えられます。
・軒樋金具の破損
・施工不良
勾配不良が発生する理由を、それぞれチェックしていきましょう。
軒樋を固定している金具が破損すると、勾配不良が発生する原因になります。
雨や雪、強風などの衝撃が軒樋にかかると、金具にも負荷がかかり、破損してしまうことがあります。
金具が破損すると、雨樋の勾配がずれてしまうのです。
また、軒樋を固定している鼻隠しや垂木が経年劣化しても、金具が破損しやすくなります。
勾配不良が起きて雨漏りが発生する前に、軒樋金具が破損していないかメンテナンスするようにしましょう。
もとの施工不良が原因で、軒樋の勾配が適切でない状態になっていることも考えられます。
知識や経験が少ない業者が軒樋を設置すると、施工不良の原因となる場合があります。
雨樋を専門的に扱う業者は、一般的に「建築板金業者」や「瓦業者」です。
雨樋の設置や修理を得意としない業者に施工を依頼してしまうと、施工不良が発生する可能性が高まります。
軒樋の勾配をうまくとって雨樋を施工するためには、専門業者に依頼するようにしましょう。
勾配が適切であるのにもかかわらず、雨樋が不具合を起こす場合は、以下のようなトラブルが発生している可能性があります。
・雨樋の破損
・継手のズレや外れ
・ゴミの詰まり
簡単な修理で症状が改善する場合もあります。
しかし、場合によってはある程度大がかりな修理が必要になるケースもあります。
発生したトラブルに対する解決方法や修理費用を、以下でそれぞれ解説します。
台風や豪雪などによって雨樋に強い負荷がかかると、破損して排水機能にトラブルが発生する場合があります。
破損してしまった雨樋は、基本的に交換修理が必要になります。
業者に雨樋の交換を依頼した場合の修理費用は、一般的に15〜30万円ほどが相場です。
ただし、修理箇所が高所であったり、脚立やはしごでは作業ができなかったりする場合には、足場の設置が必要です。
足場の設置費用は、10〜30万円程度がかかります。
継手がズレたり外れたりしている場合も、雨樋に不具合が発生します。
継手とは、2本以上の雨樋を接合するパーツです。
軒樋をつなげる継手は、「軒継手」といいます。
軒継手は専用の接着剤を用いて接着されていますが、接合部分が何らかの原因で破損してしまう場合があります。
接着剤で再度接合するだけで済む場合もありますが、軒継手が破損していたら交換が必要です。
軒継手の補修を業者に依頼した場合の一般的な費用相場は、2〜30万円程度です。
ただし、修理に足場の設置が必要となる場合は、追加で10〜30万円ほど必要になります。
雨樋に落ち葉や鳥の巣などのゴミが詰まっている場合は、水が上手く流れずに溢れてしまいます。
取り除くことで排水機能が改善しますので、雨樋の掃除をする必要があります。
自力での掃除は、高所からの転落の危険があるのでおすすめしません。
掃除は専門業者に依頼しましょう。
雨樋の掃除を業者に依頼した場合の費用相場は、およそ15,000円です。
雨樋の勾配を調整する方法は、自分でやるか、業者に頼むかのどちらかです。
雨樋の勾配は「水糸(みずいと)」と呼ばれる糸を使って傾斜をつけます。
まず、集水器のあるところを「水下」、集水器から一番離れているところを「水上」として、雨樋金具を取り付けます。
その後に、水糸を雨樋金具に結(す)いて、途中の金具の位置を決め、間に取り付けていきます。
ちなみに、一般的には雨樋金具の間隔は45~60センチとなります。
たまに1m間隔を開けても良いものもあったりと、雨樋の種類によって変わってきます。
以下でメリット・デメリットも含めてそれぞれについて説明します。
雨樋の勾配をDIYで調整する場合、次のような手順で行います。
1.雨樋を固定する金具を購入する
2.雨樋の最高部と最低部を決め、勾配に合わせて糸を張る
3.糸の高さに合わせて、金具を45〜60センチメートル間隔で設置する
お金がかかるのは、金具(1個200円ほど)やネジ(1本10円ほど)を購入するときだけです。
数千円で済むため安く抑えられることが大きなメリットでしょう。
しかし、糸を張るのも金具を設置するのも職人でなければ困難な作業です。
少しでもズレた状態で設置してしまったら、結局、業者に頼んで修理し直す必要があります。
高所の作業になり危険も伴うことも考えると、DIYでの修理はおすすめできません。
雨樋の勾配は、作業に慣れている業者に頼むことで安全かつ確実に直せます。
費用の目安は5,000〜3万円ほどです。
DIYに比べると価格が高い点はデメリットですが、外壁まで損害が広がると修理に数十万円かかるでしょう。
雨樋の修理は、ハウスメーカーや工務店ではなく雨樋の専門業者に頼むことで費用を抑えられます。
家を建ててくれたハウスメーカーや工務店は安心して依頼できますが、自社での施工を行ってくれません。
別の下請け業者に発注するため、中間マージンと呼ばれる手数料が発生して割高になるでしょう。
雨樋の勾配は、あふれることなく雨水を流して家を守るためには欠かせません。
ただ傾いていればよいわけではなく、適切な方向・角度になっていることが重要です。
雨樋の勾配について不安に感じたら、まずは業者に問い合わせて状態を確認してみましょう。
「自分でやる?雨樋を修理する時の7つの工程と交換時の大切なポイント」では雨樋の修理方法を具体的に紹介しています。
ぜひチェックしてみてください。
内野 友和
この記事は私が書いています。
1979年生まれ。一級建築板金技能士。
父・内野国春の元で建築板金の修行を始め、2014年より代表となり家業を受け継ぐ。
20年以上、約5000件の現場経験で培った技術と知識で、建物の屋根・雨樋・板金・外壁工事を通じ、地域の皆様のお役に立てるように努力しております。