「雨樋を取り付ける位置はどこがいいのか?」
雨樋を設置する際、こんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
屋根から流れ落ちる雨水を適切に流すために、雨樋を取り付ける位置には気をつけなければいけません。
間違った箇所に取り付けてしまうと、雨水が雨樋から溢れて、外壁の腐食や地面のぬかるみの原因になります。
今回は雨樋を取り付ける位置をテーマに、以下のような情報を解説していきます。
・雨樋を取り付けるベストな位置
・雨樋の勾配の付け方
・縦樋を取り付ける位置
・雨樋を取り付ける際のポイント
雨樋の取り付けを検討している方は、ぜひこの記事を参考にして、適切な位置はどこかを確認しましょう。
屋根の上に降った雨を集めて地面に排水する設備を雨樋と呼びます。
雨樋は、主に以下のような5つのパーツで構成されています。
・軒樋
・縦樋
・集水器
・エルボ
・縦樋と軒樋の継手(つぎて)
屋根の上から流れ落ちてくる雨水を最初に受け止める役割を担うのは、軒樋と呼ばれる部位です。
屋根の側面に沿うように取り付けられた軒樋が、雨水を全て受け止めます。
軒樋が受け止めた雨水は、集水器と呼ばれるパーツに集まり、縦樋に流れていきます。
縦樋は、住宅に縦向きに取り付けられているパーツです。
縦樋に流れ込んだ雨水は、地面に排水されます。
ただし、屋根や外壁の形状は住宅によってさまざまです。
縦樋を外壁や屋根の形に沿って曲げる必要がある場合は、L字型のエルボと呼ばれるパーツを使用します。
また、雨樋の長さが不足する場合は、継手でつなげて延長させます。
雨樋は、さまざまな部品を組み合わせて住宅に合うように施工されるのです。
雨樋を取り付ける際は、正しい勾配をつけた位置に設置するのが一般的です。
雨樋に勾配をつける理由は、屋根から流れてきた雨水を集水器に集めて排水するためです。
集水器とは、縦樋と接続された、雨樋の雨水を集めて排水するための部材です。
傾斜をつけなければ、雨樋は役割を果たしません。
雨水がうまく排水されず外壁に降りかかると、建物の腐食が進み大掛かりな修繕工事が必要になります。
大掛かりな修繕工事には多額の費用がかかるので、雨樋の正しい取り付けは、家を長持ちさせるために欠かせないといえます。
雨樋の勾配の付け方は、「水糸(みずいと)」という糸を使います。
勾配の付け方の手順は、以下のとおりです。
・両端の金具(留め具)を取り付ける
・水糸を水上から水下に張る
・勾配に沿って金具を取り付ける
まず、集水器のあるところを水下、一番離れている箇所を水上として、それぞれの位置に雨樋を固定する金具を取り付けます。
水糸を水上から水下へ張り、勾配をつけます。
最後に、水上と水下の間に45〜60センチメートル間隔で雨樋を留める金具を取り付けたら完了です。
雨樋のタイプによっては、金具を1メートル間隔で取り付ける場合もあります。
また、雨樋の勾配は10メートルあたり3〜5センチの高低差が一般的です。
雨樋の勾配を算出するには、高低差を1/300で設定して計算するとわかりやすいです。
水上から水下の距離が10メートルの場合、水勾配の計算式は「10,000ミリメートル×1/300=33,3=3.3センチメートル」となります。
雨樋の長さが10メートルの場合、水上と水下の高低差は3.3センチで設定します。
縦樋を取り付ける位置を決める際のポイントは、2つあります。
・排水機能が損なわれない位置
・美観に注意
縦樋の役割は、軒樋から集水器へ流れてきた雨水を下へ送り、排水することです。
そのため、排水先を考えて縦樋は取り付ける必要があります。
もしも、排水先を考えず縦樋を設置して、地面に垂れ流しにしてしまうと、土壌のぬかるみやコンクリートの腐敗につながります。
道路の側溝や河川へ排水する場合は、縦樋が排水先へ届くように取り付けましょう。
また、浸透マスへ排水する場合も、縦樋の先がマス内まで届くか確認してください。
浸透マスとは、雨樋から流れてくる雨水を地中で溜めるためのマスです。
溜まった雨水は、徐々に地中に浸透していきます。
上記の注意点を意識して、縦樋を取り付ける位置を検討しましょう。
また、縦樋はなるべく目立たせないように設置するのが一般的です。
外壁から飛び出すように取り付けられていては、こだわりの住宅も外観の美しさが損なわれてしまいます。
縦樋は、外壁の色に合わせたり、ベランダの内側に取り付けて目立たないようにしたりして取り付けましょう。
雨樋の取り付け位置を間違った場合は、以下の2つのような問題が起こる可能性があります。
・雨漏りが発生しやすくなる
・外観が悪くなる
雨樋は雨水をしっかりと地面に排水するために、適切な位置に取り付けることが重要です。
以下にて、発生しうる問題についてそれぞれ詳しく解説しましょう。
雨樋の取り付け位置を間違えると、雨漏りが発生してしまうことがあります。
なぜ雨漏りの発生につながるかというと、うまく排水されなかった雨水が軒下や外壁に流れてしまうためです。
軒下や外壁に亀裂や隙間があると、そこから雨水が住宅内に浸入して、雨漏りが発生してしまいます。
雨漏りを防ぐためには、適切な位置に雨樋を設置することが大切です。
雨樋を無計画に取り付けてしまうと、住宅の外観が悪化する原因になります。
雨樋は雨水を排水するための装置であり、最も重視すべき要素は排水性能であると考えられがちです。
しかし、機能性だけを考えて設置すると、雨樋が悪目立ちしてしまう可能性があります。
例えば、こだわってデザインした外壁の前を堂々と横切るように設置された雨樋は、美観を大きく損なってしまうでしょう。
雨樋を取り付ける際は、排水性能だけでなく、外観を意識した施工をすることも重要です。
雨樋の位置を変更する際の手順は、以下の5つの工程で行われるのが一般的です。
1.新しい雨樋を用意する
2.既存の雨樋を撤去する
3.新しい軒樋を設置する
4.集水器とエルボを設置する
5.縦樋を設置する
それぞれの工程の詳細を解説していきます。
雨樋の位置を変更したいとお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。
まずは、位置の変更のために必要となる、新しい雨樋のパーツを用意します。
雨樋の交換に必要なパーツは、以下の5つです。
・軒樋
・縦樋
・集水器
・エルボ
・軒樋と縦樋の継手
また、雨樋を固定するための留め具である金具が必要です。
一般的に、雨樋の表面部分にメーカーや品番が刻印されています。
既存の雨樋を確認して、同じメーカーや品番のパーツを選びましょう。
位置を変更したい部分にある雨樋を撤去します。
縦樋の位置だけを変更したい場合でも、集水器の接合部分が変わるため、軒樋も撤去して取り替える必要があります。
また、雨樋の位置の変更で不要になるのであれば、軒樋や縦樋を固定している金具も取り外しましょう。
雨樋金具を取り外したあとは、ビスや釘で固定されていた部分に穴が残ってしまいます。
残った穴はそのまま放置しておくと雨水が入り込んで建物内部が腐食してしまうため、埋める必要があります。
シリコンと呼ばれる充填剤で、穴を埋めるようにしましょう。
既存の雨樋を撤去して下地も整えたら、新しい軒樋を設置します。
まず、集水器を接合する箇所に穴をあけておきましょう。
新しい金具を取り付けて、軒樋を固定していきます。
軒樋の穴をあけておいた箇所に、集水器を取り付けて、その下にエルボを接続します。
エルボと集水器を接続する際には、雨樋専用の接着剤を塗っておきましょう。
どのようなルートで地面まで到達させるかをあらかじめ想定して、縦樋を取り付けていきます。
まずは、外壁に金具を取り付けて、最後に縦樋を固定します。
屋根や外壁には障害物がたくさんあるので、エルボを使って角度を変更しながら縦樋をうまく設置していきましょう。
雨樋を取り付ける際に注意すべきポイントは、以下の3つが挙げられます。
・雨樋を設置するスペースがあるか
・下地に問題はないか
・雨を受け止められる位置か
上記3つのポイントを押さえた上で雨樋を取り付けなければ、排水機能がうまく機能しません。
施工費用を無駄にしないためにも、注意すべきポイントを確認して、取り付けるようにしましょう。
雨樋を取り付ける際は、設置するためのスペースが十分にあるか確認しましょう。
軒樋は、屋根の側面にある「垂木(たるき)」、もしくは「鼻隠し(はなかくし)」という部分に取り付けられています。
垂木とは、屋根を支える木材です。
屋根材と下地材を剥がしたときに、最初に現れる等間隔で設置された太い木を垂木と呼びます。
屋根の構造としては、垂木の上に下地材の「野地板(のじいた)」、次に防水シート、最後に瓦やスレートなどの屋根材が設置されるのが一般的です。
鼻隠しは、垂木を隠すために取り付けられた板です。
例えば、家の外観に木材の風合いが合わない場合、垂木を隠すために鼻隠しを取り付けることがあります。
鼻隠しは以下の動画を見たらすぐにわかります。
建物の構造上、垂木と鼻隠しに雨樋を取り付けるスペースがないこともあるため、あらかじめ確認が必要です。
しかし、雨樋を取り付ける際にはどれくらいのスペースが必要か、素人では判断が難しいため、屋根業者に相談することをおすすめします。
雨樋を取り付ける際は、金具を設置する下地に問題はないか注意しましょう。
下地が劣化していると、雨樋を安定して固定できません。
雨樋をしっかりと固定できないと、雨量の多い日に落下してしまう恐れがあります。
そのため、雨樋を取り付ける際は、下地が劣化していたり破損したりしていないかを確認しなければなりません。
また、下地に劣化や破損が見られた場合は、雨樋を取り付ける前に補修をしておきましょう。
雨樋を取り付ける箇所は、屋根から流れてくる雨を受け止められる位置かも確認しましょう。
屋根の勾配によって、屋根から雨樋へ流れる雨水の勢いは異なります。
もしも、屋根の勾配に適していない位置に雨樋を取り付けてしまうと、雨水を受け止められず、溢れて地面へ落ちてしまいます。
雨樋を取り付ける際は、屋根の勾配に合わせて取り付ける位置を検討しましょう。
屋根の勾配に合った雨樋の取り付け位置は、素人では判断が難しいため、屋根業者へ相談することをおすすめします。
雨樋は、雨水を確実に排水できる位置に取り付けなければいけません。
正しい位置へ取り付けるためには、雨樋を設置する下地の状態やスペースの確保、屋根の勾配への配慮など、さまざまな確認事項があります。
ぜひ今回の記事を参考に、ご自身の住宅にあった雨樋の位置を見極めましょう。
また、判断が難しい場合は、屋根業者に相談して正確な位置に雨樋を取り付けるようにしましょう。
他に、雨樋を修理するポイントを知りたい場合は「自分でやる?雨樋を修理する時の7つの工程と交換時の大切なポイント」をチェックしてみてください。
内野 友和
この記事は私が書いています。
1979年生まれ。一級建築板金技能士。
父・内野国春の元で建築板金の修行を始め、2014年より代表となり家業を受け継ぐ。
20年以上、約5000件の現場経験で培った技術と知識で、建物の屋根・雨樋・板金・外壁工事を通じ、地域の皆様のお役に立てるように努力しております。