「雨樋にはどんなサイズがあるか知りたい」
「雨樋のサイズの選び方が知りたい」
雨樋を交換する際に、このようなお悩みを持つ方も多いでしょう。
住宅を雨水からしっかり守るためには、正しい雨樋のサイズ選びが大切です。
この記事では、雨樋のサイズの種類・選び方・測り方や、選ぶ大きさを間違えたら起こる問題について解説します。
雨樋の正しいサイズ選びができれば、部材の破損や雨漏りを防ぎやすくなるでしょう。
雨樋の規格や寸法の種類・選び方・測り方について説明していきます。
知っておくと、雨樋の設置後にトラブルが起こるリスクを低下させられるでしょう。
軒先に横方向に取り付けられた「軒樋」は半円型(半月型)と角型があり、特に角型はメーカーの型番によって寸法が異なります。
半円型は直径75mm・100mm・105mm・120mmのものがあります。
半円型は各メーカー、それぞれサイズ感はだいたい同じです。
ただ、完全に同じサイズではないので、別のメーカー同士を取り付けると雨漏りのリスクがあります。
角型を探す場合は取り付けているメーカーの商品名を必ず調べましょう。
角型の軒樋は類似商品が多数あり、同じ型番のものでないと部分交換ができません。
角型の軒樋の種類を調べる方法で一番簡単なのが、軒樋「止まり」か「軒継手」を確認することです。
この部品には必ず刻印が打ってありますので近くで見るとよく分かります。
縦に取り付けられた「縦樋」には、パイプの直径を表した45、55、60、75、90といったサイズ表記があります。
また、縦樋の長さには1,800・2,700ミリメートルなどのサイズがあります。
これは一般住宅に使用する一般的な雨樋で、工場などの大型の雨樋に関しては別表記になりますので注意が必要です。
屋根への降水量よりも軒樋、縦樋それぞれの排水量が多くなるように部材のサイズを選びましょう。
適切なサイズ選びのためには、屋根への降水量や雨樋の排水量を計算することが重要です。
屋根への降水量は「投影面積×1秒間の降雨強度」で算出します。
「投影面積」とは、家を真上から見た際に屋根を地面に投影した面積のことです。
屋根への降水量を求める際は、屋根すべての面積ではなく縦樋1本あたりが受け持つ面積を算出します。
「降雨強度」とは、気象庁が発表している10分間降雨量を1時間あたりに換算した数値です。
地域によって異なりますが、100、120、140、160ミリメートル毎時に分けられます。
降雨強度の単位はミリメートル毎時ですので、単位を合わせるために以下の換算を行います。
・1時間あたりを1秒間あたりにする
・単位をミリメートルからメートルにする
屋根への降水量が求められたら、次は雨樋の排水量の計算です。
軒樋の排水量は「1/安全係数(1.5)×排水有効断面積×排水速度」の式で求めます。
安全係数とは、軒樋にゴミが溜まり排水量が減少することを想定した数値です。
縦樋の排水量は「流水係数(0.6)×落とし口の流速×流水断面積」の式で求めます。
流水係数とは、気泡や渦の発生で流れが悪くなることを想定した数値です。
軒樋は部材の品番を調べるのが一番間違いがありません。
先にも述べたとおり、軒樋はメーカーの品番によって微妙にサイズが異なるからです。
縦樋は丸型の場合は外径寸法が表記サイズになっているので、定規をあてて調べることができますので簡単です。
角型の縦樋の場合はメーカーごとに形が異なりますので、部材(縦継ぎ手やエルボ)に入っている刻印を見れば簡単にわかります。
劣化により文字が消えている可能性があるので、日の当たらない場所もくまなく調べてみてください。
雨樋本体にメーカーや型番が記されていない場合は、設置工事をしたときの見積書に記載されていないか確認してみましょう。
雨樋には、以下のようなさまざまな素材があります。
・硬質塩化ビニール製
・ステンレス製
・銅製
・ガルバリウム鋼板製
雨樋を設置する場所や周囲の環境、またはお好みに合わせて素材を選ぶようにしましょう。
以下にて、雨樋の素材についてそれぞれの特徴をわかりやすく解説していきます。
硬質塩化ビニール製の雨樋は、金属製に比べると価格が安く、加工が容易です。
必要な雨樋の長さは住宅によって異なるため、場合によっては調整のために切断が必要です。
硬質塩化ビニールの雨樋は切断が簡単で扱いやすく、切断面の処理も不要なため工事にかかる時間を短縮できます。
また、硬質塩化ビニールは腐食やサビの心配もありません。
そのため、雨の日が多かったり海が近かったりする地域でも問題なく設置できます。
メリットが多いため、現在は多くの住宅で硬質塩化ビニール製の雨樋が使用されているのです。
デメリットとしては、紫外線に弱いことが挙げられます。
紫外線に長い間さらされると、色あせやひび割れなどの劣化症状が起こりやすくなります。
雨樋は紫外線の影響を受けやすいため、劣化症状が見られたら早めの交換が必要です。
ステンレスは、サビにくく耐久性の高い金属素材です。
ステンレスで作られた雨樋は強度が高いため、強い力が加わっても破損しにくいというメリットがあります。
そのため、ステンレス製の雨樋は風雨の影響を受けやすい場所への設置に適しています。
大雨や強風などが発生しても、破損するリスクを減らせるのです。
デメリットとしては、傷がつきやすく金属疲労が起きやすい点です。
金属疲労とは、金属の一部分がくり返しダメージを受けていくと、少しの力でも破損してしまう現象です。
ステンレス製の雨樋も、風や雨などによって長い期間ダメージを受け続けると、金属疲労を起こす場合があるでしょう。
そのため、耐久性の高いステンレス素材であっても、定期的に点検やメンテナンスは必要です。
銅は、ほかの金属素材の中でも加工しやすく、腐食しにくいという特徴を持ちます。
そのため、外で使用する建築素材としてもよく使われます。
また、銅ははじめは光沢のある赤褐色をしていますが、経年により酸化由来のサビが生じて、美しい青緑色になるのも特徴の1つです。
名古屋城の屋根も、銅が酸化したことで美しい青緑色をしています。
時間が経つほど味のある姿になっていくのも、銅のメリットといえます。
デメリットは、価格が高めな点です。
銅製の雨樋を選ぶ際は、メリットとともに価格もよく確認しておきましょう。
ガルバリウム鋼板は、外壁や屋根材にも使用されるほど耐久性や防サビ性、防かび性に優れた金属です。
そのため、風雨に長期間さらされてしまう雨樋の素材としても使われています。
紫外線にも強いので、塩ビ製の雨樋よりも寿命が長くなります。
デメリットは施工価格が高めな点です。
ガルバリウム鋼板は価格が高めなので、一般のご家庭の雨樋にはあまり選ばれない素材です。
雨樋のサイズ選びを間違えた場合、起こりうる問題は2つあります。
・排水機能の低下
・雨樋の破損
事前に知っておくと失敗を避けやすくなるでしょう。
適切なサイズより小さな雨樋を取り付けてしまうと雨樋の排水機能が低下します。
うまく排水できずに軒樋から溢れた雨水が外壁を傷めてしまうでしょう。また、軒先や軒裏から水が内部へ侵入すれば部材が腐食する原因となります。
軒先から落ちた雨水は地面に溝をつくり、水はけが悪くなることで建物の基礎を傷める原因にもなるでしょう。
屋根の面積と降水量に合った雨樋を選ばなければ、雨水の重さで雨樋が破損する可能性があります。
排水しきれないほどの雨水は、雨樋に大きな負荷をかけてしまうでしょう。
雨樋のサイズ選びを失敗しない方法を、以下で詳しく解説します。
雨樋の交換を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
雨樋を交換する際は、既存の部材をすぐに捨てないようにしましょう。
交換する雨樋のサイズを調べる際に使うためです。
特に、メーカーや型番が書かれた部分を取っておくと、同サイズの製品を探すのに便利です。
どうしても古い雨樋を取っておけない場合は、サイズが記載された部分を写真に撮っておくことをおすすめします。
雨樋のサイズがどうしてもわからない、もしくは既存の部材をすでに処分してしまったという場合は、専門業者家に相談しましょう。
雨樋にはさまざまなサイズがあります。
「既存の雨樋のサイズがこのくらいだったから」と記憶や目視に頼り選んでしまうと、失敗しやすいです。
ただし、相談する際は雨樋工事の経験が豊富な優良業者を選ぶ必要があります。
経験が少なかったり、いいかげんな工事をしたりする業者は、雨樋選びを信用できません。
いざ工事をしようとしても雨樋のサイズが違った場合、無駄に工期が延びることにもなるでしょう。
また、悪徳業者の場合はサイズが合わなくても無理に設置してしまうケースもあります。
施工不良が発生すると、雨樋だけでなく壁や屋根の寿命も縮んでしまいます。
そのため、雨樋についての相談や工事を行う際の業者選びは、慎重に行いましょう。
また、サイズが少しでも異なっていると、雨樋から雨水が溢れたり、破損しやすくなるので注意しておきましょう。
適切な排水機能を維持するためには、雨樋の正しいサイズ選びが重要です。
雨樋は建物を雨水から守り、建物の耐久性を維持するための重要な役割を担っています。
そんな雨樋のサイズ選びは感覚的ではなく、屋根への降水量と雨樋の排水量を計算して決めなければいけません。
間違ったサイズの雨樋を取り付けると、雨水で建物を傷める原因になります。
大切な建物のためにも、適切なサイズの雨樋を選びましょう。
他に、雨樋を修理するポイントを知りたい場合は「自分でやる?雨樋を修理する時の7つの工程と交換時の大切なポイント」をチェックしてみてください。
内野 友和
この記事は私が書いています。
1979年生まれ。一級建築板金技能士。
父・内野国春の元で建築板金の修行を始め、2014年より代表となり家業を受け継ぐ。
20年以上、約5000件の現場経験で培った技術と知識で、建物の屋根・雨樋・板金・外壁工事を通じ、地域の皆様のお役に立てるように努力しております。