「雨樋」が屋根に付いているものだとは知っているものの、取り付け方や部品については知らない方も多いのではないでしょうか。
雨樋がきちんと機能するためには、金具が取り付けられていることが基本です。
「どんな部分にどんな金具がどのように取り付けられているか」について、大まかでもいいので知っておけば雨樋金具の大事さが分かってくるでしょう。
また、雨樋の金具の名前や役割を覚えておくことは、メンテナンスの意識にもつながります。
この記事では、以下の点を解説していきます。
・雨樋の金具の名前や特徴
・雨樋の金具を設置する間隔や付け方
雨樋に関する基礎知識を付けることで、屋根を正しく守っていきましょう。
雨樋の金具とは、軒樋や縦樋を固定するための留め具です。
雨樋は半円型や角型状になっており、鼻隠し部分や垂木にしっかりと固定するためには専用の留め具が必要です。
鼻隠しとは、屋根の軒先の下に設置されている板を指します。
雨樋を固定する際に専用の金具以外を使用すると、強度が低下してしまいます。
ほかの金具では代用はできないので、注意しましょう。
また、雨樋の金具には「軒樋用」と「縦樋用」があります。
以下にて、縦樋と軒樋に付けるそれぞれの金具の種類と名称を詳しく紹介していきます。
これから雨樋の交換や取り付けをしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
屋根の縁に沿うように横向きに設置されている「軒樋」には、雨樋を支えるための鼻隠しがあります。
軒樋を支えるための金具の種類や付け方は、屋根や外壁の状況によって異なります。
以下では金具の種類を紹介していきましょう。
鼻隠しの下地になっている垂木へ金具を打ち込むのが「打ち込み」タイプです。
垂木へピンポイントに金具を打ち込むため、45センチ間隔にある垂木を下調べして取り付けなければ強度がつきません。
またモルタルを塗っている鼻隠しの場合は、直接打ち付けるとモルタルが割れてしまうため、下穴をあけてから金具を打ち込みます。
正面から鼻隠し部分に金具を打ち込んでいくのが「正面打ち」タイプで、設置がしやすい方法です。
正面に金具が見えてしまうため、見た目を損なわないように、丁寧に取り付ける必要があります。
正面から直接金具を打ち込めない場合、「横打ち」タイプで取り付けます。
出幅が均一に揃っていなければ雨樋に雨水が入りづらかったり、流れにくくなってしまうので、丁寧な施工が求められます。
軒樋からの雨水を下に排出するために縦向きに取り付けられている「縦樋」の固定金具について紹介していきます。
上記写真の右が「打ち込みタイプ」で左が「トンボ」です。
外壁に直接差し込み打ち付けていくのが、「でんでん」という金具です。直接打ち込むので「打ち込み」タイプとも言います。
外壁に穴をあけるため、金具を伝って雨水が浸入しないよう下から傾斜に注意して設置することが大事です。また、金具の穴にはコーキングを事前に注入しておくと万が一、雨水が浸入しても大丈夫です。
「トンボ」という金具は、外壁に面する部分が板のように平面になっています。外壁に対して、ビスを使って固定ができます。こちらも打ち込みタイプ同様に「でんでん」と呼ばれます。
雨樋は、雨や雨水の重さも加わるのではずれないように固定する必要があります。金具の間隔が広い場合、雨樋が落下するリスクがあるので注意しなければなりません。
雨樋金具の間隔は、以下の状況によって異なります。
・雨樋の種類
・屋根の勾配
・雪が降る地域かどうか
・風が強い地域かどうか
降雪がない、もしくは風が強くない地域の場合、選ぶ金具によっては1メートル間隔で雨樋の金具を取り付けることもあります。
しかし、強風や積雪の影響を受けやすい地域であれば、金具の間隔が広めだと雨樋が気象の変化で耐えられなくなる可能性が考えられます。
気象条件の影響を受けやすいエリアなら、45〜60センチメートルの間隔で金具を用いて雨樋を設置することが一般的です。適切なメンテナンスが行われていれば、雨樋の重さを受け止めて損傷のリスクが抑えられるでしょう。
雨樋の金具は、家の環境に合わせて正しい位置で取り付けることが大事です。
雨樋の金具を設置する際の注意点を挙げていきます。
雨樋の金具を設置する際の注意点は、主に以下の3つです。
・既存の穴にコーキングをほどこす
・軒樋金具は適した勾配をつける
・縦樋金具の固定位置に注意する
雨樋の金具を設置する前に注意点を確認しておくことで、施工の失敗を防ぎやすくなります。
それぞれの注意点の内容を、さらに詳しく解説していきましょう。
雨樋の金具を交換する際は、古い留め具を外したときにあいた穴にコーキングをほどこしてください。
コーキングとは粘度のある充填剤で、隙間を埋めるために使用します。
あいた穴に、そのまま新しい金具を設置しないようにしましょう。
金具と穴の隙間から雨水が浸入して、雨漏りが発生する原因となります。
そのため、雨樋の金具を交換する際はコーキングも用意しておきましょう。
軒樋は集水器に向けて勾配をつけて設置しなければ、排水機能が低下して雨水が溢れてしまいます。
軒樋金具は平行に取り付けるのではなく、雨水がうまく集水器に集まるように勾配をつけましょう。
金具の勾配は、雨樋の端から集水器に向けて傾きが100分の1から200分の1になるようにつけるといいでしょう。
ただし、設置した金具を曲げて勾配をつけないようにしましょう。
金具の強度が下がって寿命が短くなります。
縦樋金具を設置する際は、外壁のコーキング部分には設置しないようにしてください。
コーキングは、外壁の隙間を埋める接着剤のような役割を担っています。
そのため、コーキングに穴をあけてしまうと、外壁からの雨漏りの原因になります。
また、設置から時間が経っているコーキングは穴をあけると亀裂が入り、崩れる可能性もあるので気をつけましょう。
縦樋金具を設置する場合は、必ずコーキングを施工している場所以外の箇所に穴をあけるようにしましょう。
雨樋の金具の設置はDIYでも可能です。
金具の設置方法を紹介する動画やブログなどを参考にする方も多いでしょう。
しかし、金具の設置方法を間違えると雨樋が十分に機能しません。
排水機能に問題が起こると、雨樋から雨水が溢れて雨漏りの原因になることもあります。
また、雨樋の設置作業は高所で行います。
2階以上に設置している雨樋はもちろんのこと、1階でもはしごや脚立で工事を行うのは危険です。
ケガや失敗を避けるためにも、実績が豊富な専門業者に工事は依頼しましょう。
以下にて、雨樋の金具の施工を依頼する際の業者の選び方を紹介します。
工事の業者選びにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、施工実績を確認してみましょう。
雨樋の施工は、主に建築板金業者が行っています。
そこで、雨樋の交換や修理を行っている建築板金業者を見つけたら、施工実績を確認してみてください。
実績が豊富な業者ならば、技術力が高いため信頼できます。
相見積もりをして、複数社と工事価格を比較してみましょう。
相見積もりとは、複数の業者に見積もりを作ってもらい、内容を比較してみることです。
相見積もりをすれば、おおよその費用相場がわかります。
また、見積もりの内容を比較して、内訳がわかりやすい業者を選ぶのもおすすめです。
工事費用は、極端に高い業者だけでなく、安すぎるケースも選ばないほうが安心です。
安い見積もりで工事を受注して、手抜き工事や追加料金の請求が行われる場合があります。
工事の依頼は、見積価格が適正な業者にお願いしましょう。
自社施工する業者を選ぶと、費用を抑えられたり、工事がスムーズに進んだりします。
業者の中には、雨樋修理の仕事を受注してそのまま下請けに丸投げする場合もあります。
しかし、下請けに仕事を回すと中間マージンがかかり、工事価格が高くなるのです。
また、間に受注会社が入っていると、下請け業者と意思疎通がうまくいかないこともあります。
費用が安くなったり良質な工事を受けられたりする場合が多いため、雨樋金具の交換は自社施工する業者に依頼しましょう。
雨樋留め具は、軒樋を固定するための金具です。
雨樋を固定するほか、「雨樋からのスムーズな排水」にも深く関わっている重要な部位です。
軒樋の留め具には「受け金具」「吊り金具」、縦樋の留め具には「打ち込み」「トンボ」が一般的です。
その他にも「バンドタイプ」などがありますが、一般住宅には用いられません。
金具の固定が不十分だと雨樋本来の機能が失われることはもちろん、外れたり変形したりするリスクが考えられます。
この記事で雨樋の留め具の特徴を知って適切に固定することで住まいを雨から守りましょう。
他に、雨樋を修理するポイントを知りたい場合は「自分でやる?雨樋を修理する時の7つの工程と交換時の大切なポイント」をチェックしてみてください。
内野 友和
この記事は私が書いています。
1979年生まれ。一級建築板金技能士。
父・内野国春の元で建築板金の修行を始め、2014年より代表となり家業を受け継ぐ。
20年以上、約5000件の現場経験で培った技術と知識で、建物の屋根・雨樋・板金・外壁工事を通じ、地域の皆様のお役に立てるように努力しております。