「建物の付帯部ってどの箇所?」
「付帯部の塗装は必要なの?」
「付帯部の塗装にかかる費用相場を知りたい」
戸建て住宅に暮らしていると、上記のような疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
付帯部とはどこなのか、塗装は必要なのかをよく理解していないと、住宅のメンテナンスを適切に行えなくなる場合があります。
この記事では、付帯部について以下のような情報を解説します。
・付帯部の名称と役割
・付帯部塗装の必要性
・付帯部の塗装にかかる費用相場
記事を読んで上記の内容を把握しておくと、付帯部のメンテナンスや塗装工事での失敗を防ぎやすくなります。
付帯部とは、大まかにいうと外壁と屋根以外の細かなパーツを指します。
付帯部の種類は多く、それぞれ建物を守るための重要な役割を持ちます。
そのため、付帯部についてより理解をしておくことで、住宅のメンテナンスを適切なタイミングや方法で行えるようになるのです。
下記が主な付帯部の名称です。
・雨樋
・軒天
・破風板
・鼻隠し
・庇(ひさし)
・雨戸
・戸袋
・水切り
・笠木
・ウッドデッキ、濡れ縁
・帯板、幕板
・基礎
・霧よけ、出窓天板
それぞれの付帯部の設置箇所と役割について解説していきます。
雨樋は、屋根の先の軒先付近に設置されており、流れてくる雨水を集めて排水設備に誘導する役割を担っています。
雨樋を設置していないと、外壁に雨水が直接流れてしまい、シミができる可能性が高いです。
また、屋根から落ちる雨水が地面に強く当たると、泥はねによって建物が汚れてしまいます。
そのため、雨樋を設置して建物を雨水から守っているのです。
外壁から突き出た屋根部分は軒と呼ばれ、下から見上げたときに見える裏側の箇所を軒天といいます。
軒天には、火事の際の延焼防止や、外壁に雨水や紫外線を当たりにくくして建物の劣化を防ぐ役割があります。
破風板と鼻隠しは、屋根の先端部分に設置されている板です。
雨樋が設置されていない側の板を破風板といいます。
軒先の雨樋側に設置されている板が鼻隠しです。
破風板と鼻隠しの役割はほぼ同じで、雨や風から屋根を守ったり、外観を良くしたりするといった点が挙げられます。
庇は屋根とのつながりがなく、独立して窓や扉などの上部に設置されています。
庇には、直射日光を遮ったり、雨よけとして建物内への雨の浸入を防いだりする役割があります。
また、雨が直接外壁に当たらなくなるため、建物を汚れにくくする役割もあるのです。
雨戸は、窓を雨風から防ぐために外部に取り付けられる戸です。
また、戸袋は雨戸や引き込み戸の収納部分を指します。
雨戸には強風や突風から窓ガラスや家を守る役割があり、遮光や断熱、防火性能などが高く、さらに防犯効果もあるのです。
戸袋は雨戸を壁面に収納できるため、すっきりとした外観になります。
水切りは、建物の土台箇所や窓枠の下などに設置されています。
雨水が建物内部へ浸入するのを防いで、腐食や雨漏りを防止します。
笠木は、塀や手すりの上部に施工してかぶせてある部材のことです。
ベランダやバルコニーなどにも用いられる場合があります。
人間がよく触れる場所の汚れを軽減したり、美観を良くしたりする効果が期待できます。
ウッドデッキや濡れ縁とは、住宅から屋外に出ているリビングや縁側の延長部分のことです。
子供の遊び場や日向ぼっこ、洗濯物干し場などさまざまな用途で使用されています。
ウッドデッキや濡れ縁も雨風にさらされるため、経年劣化の防止や美観を整えるための塗装が必要です。
帯板・幕板は、家の外側についている板状の装飾材のことです。
1階と2階の外壁部分の境界線の役割を持っています。
住宅の美観に関わる箇所であるため、塗装を行うことにより、経年劣化を遅らせつつ住宅の美観を改善できます。
基礎は家の土台となる部分です。
住宅を支えたり、土壌からの湿気を逃したりする役割があります。
基礎は湿気によってひび割れが発生することもあるので、塗料を適切に選ぶことが大切です。
霧除け(きりよけ)や出窓天板とは、窓や玄関などの開口部の上に設けられた小さな屋根のことです。
霧除けや出窓天板は雨、風から居住者を守ってくれます。
一方で経年劣化しやすい箇所でもあるため、塗装などのメンテナンスを行わないと、さびて穴があくこともあります。
付帯部は「塗装しないとすぐに住宅が傷んでしまう」ということはありません。
しかし、付帯部は定期的に塗装する必要があります。
なぜなら、塗装してメンテナンスすると住宅の寿命を延ばしやすくなるからです。
付帯部は直射日光による紫外線や熱、雨などで劣化します。
劣化や汚れがあるからといって、付帯部を新しい部品に交換すると高額な費用がかかる場合があります。
しかし定期的に塗装し直すことによって、付帯部の交換が不要となり住宅のメンテナンスコストを抑えやすいです。
付帯部の塗装は、外壁や屋根と同じタイミングで行うことをおすすめします。
理由としては、下記のとおりです。
・足場の設置費用を削減できる
・付帯部の汚れが目立ってしまう
・外壁と再塗装のタイミングを揃えやすい
外壁や屋根の塗装と同時に付帯部塗装を行わないと余計な費用がかかったり、美観を損ねたりする場合があります。
それぞれの理由について詳しくみていきましょう。
付帯部には、足場がないと塗装できない箇所があります。
例えば破風板や鼻隠し、軒樋といった屋根付近の付帯部は高所であるため、塗装には足場が必要です。
足場を一回設置するごとに費用も10〜30万円ほどかかります。
工事の回数が増えると人件費もかかってしまいます。
余計な足場費用や人件費の発生を抑えられるため、外壁や屋根の塗装と同時に付帯部の塗装を行うのがおすすめです。
付帯部は塗装をしないと色があせて美観が損なわれてしまいます。
外壁や屋根だけをきれいに塗装しても、付帯部が色あせていると目立ってしまいがちです。
そこで、住宅の外観を美しく維持するためにも、外壁や屋根と一緒に塗装するようにしましょう。
ただし、付帯部に劣化が見られる場合は、外壁や屋根の塗装を待たずにメンテナンスを行うのも大切です。
美観の問題だけでなく、塗装をしないと本来の性能を発揮できずに、雨漏りが発生したり、建物の劣化を早めてしまったりするためです。
外壁や屋根の塗装と同時でなくても、付帯部の汚れや劣化が目立つ場合には塗装工事を検討しましょう。
外壁と同時に付帯部塗装を行うと、塗料の耐用年数やメンテナンス周期を揃えやすいため、再塗装の工事をまとめて行えます。
無駄な出費や工事の回数を抑えるためにも、付帯部塗装は外壁塗装と同じタイミングで実施するのがおすすめです。
付帯部のおすすめカラーは、窓枠のサッシと同じ色にするとマッチしやすいです。
付帯部とサッシの色を合わせると建物に一体感が生まれて、全体的にすっきりとした印象になります。
付帯部は外観のアクセントになるため、外壁の色も含めてバランスのとれた配色になるようにしましょう。
付帯部を塗装する際は、色数が多いと配色のバランスが崩れて見栄えが悪くなるので、2〜3色以内がおすすめです。
サッシと同じ色にしつつ外壁の色も考慮して配色を決めると、建物が統一感のある外観になります。
外壁や屋根と同時に付帯部の塗装を行う場合に、配色に迷った際は業者にカラーシュミレーションを依頼するのもおすすめです。
「落ち着いた感じ」「明るい色」など、イメージを伝えるだけで豊富な知識を持ったプロが配色の提案をしてくれます。
付帯部は外観のポイントになるので、後悔しないためにも配色は慎重に選びましょう。
付帯部の塗装を行う際には、下記の注意点があります。
・塗装の明細は詳細に記載してもらう
・使用する塗料の耐用年数を確認する
・付帯部の素材にあった塗装を行う
・付帯部塗装は何回塗りを行うか確認する
上記の注意点を抑えないと、トラブルや無駄な出費につながる場合があるので注意が必要です。
どういうことか、詳しく解説していきます。
付帯部を塗装する際は、見積書や契約書をよく確認しておきましょう。
業者から見積もりを受け取った際は、付帯部の各部位の名称ごとに費用が記載されているか必ず確認するようにします。
費用の内訳を「一式」とひとまとめに記載されている場合は注意が必要です。
「思っていた箇所に塗装してくれていない」「工事後に追加料金を請求された」などのトラブルにつながる可能性があるからです。
また、付帯部の塗装に用いる塗料についても記載されているかチェックしておきましょう。
外壁や屋根と同時に付帯部の塗装をする場合は、それぞれに使用する塗料の商品名も記載されているのが一般的です。
このように、付帯部の塗装を依頼する際は、見積書や契約書の内容が明瞭かどうかを確認してから業者を決めると工事の失敗を防ぎやすくなります。
使用する塗料の耐用年数は確認するようにしましょう。
塗装に用いられる塗料は、フッ素塗料、ウレタン塗料、シリコン塗料、無機塗料などがあります。
各塗料の耐用年数は下記のとおりです。
・ウレタン塗料:5〜10年
・シリコン塗料:7〜15年
・フッ素塗料:12〜20年
・無機塗料:15〜25年
付帯部塗装を外壁や屋根の塗装と同じタイミングで行うと、足場費用や人件費などのコストを抑えることができます。
また外壁と付帯部の塗料を揃えることで、耐用年数が揃うため次回も同じ周期に塗装を依頼しやすくなります。
ただし屋根の場合は日光が当たりやすいため、同じ塗料でも外壁や付帯部と比較して経年劣化が早いです。
付帯部塗装では、素材にあった塗装を行うことが大切です。
素材に合わない塗装を使用すると、すぐに塗料が剥がれてしまう場合があります。
またシャッターなど動きが生じる付帯部も塗装が剥がれやすいです。
付帯部の種類はさまざまであり、鉄や樹脂、コンクリートなどさまざまな素材が使用されているものです。
付帯部の素材や機能に合わせて塗料を選ぶようにしましょう。
さらに、付帯部の素材によっては、塗装が必要ない部分もあります。
詳しくは「付帯部塗装でよくある質問」で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
付帯部の塗装には何回塗りを行うか業者に確認しておきましょう。
塗装回数が1回のみの場合では、付帯部の素材を保護する塗膜が不安定になり剥がれやすいです。
そのため、付帯部塗装時は、しっかりと2〜3回ほど塗りを行う必要があります。
付帯部塗装を1回塗りだけで済ませようとする業者もあるため、注意が必要です。
手抜き工事を防ぐためにも、施工前に塗装回数をしっかり業者に確認するようにしてください。
雨樋の塗装費用は1メートルあたり500〜1,500円ほど、破風板と鼻隠しは600〜1,300円ほどです。
軒天の場合は1平方メートルあたり1,000〜3,000円ほどとなります。
また、雨戸は1枚あたり2,000〜5,000円ほどがかかるのが一般的です。
ただし、付帯部の状況や依頼する業者によって実際にかかる費用は異なります。
詳しくは見積書を確認して、不明な点は業者に確認するようにしましょう。
付帯部の塗装でよくある質問について解説していきます。
・付帯部塗装におすすめの塗料は?
・付帯部のメンテナンス周期は?
・付帯部の塗装工程は?
・劣化しやすい付帯部の部分は?
・付帯部塗装が必要ない箇所はある?
付帯部について気になることがある方や塗装についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
付帯部の塗装では、外壁で使用したものと耐用年数を揃えられるように同じグレードの塗料を選ぶのがおすすめです。
同じグレードの塗料を選ぶと、メンテナンス時期を外壁と揃えることができるため、工事の回数を抑えられます。
低いグレードの塗料を選ぶと劣化スピードも早くなり、外壁のメンテナンス周期を迎える前に付帯部の修理や交換が必要になることもあるでしょう。
塗料の耐用年数は下記を参考にしてください。
・ウレタン塗料:5〜10年
・シリコン塗料:7〜15年
・フッ素塗料:12〜20年
・無機塗料:15〜25年
基本的に塗料は耐用年数が長くなるにつれて、費用も高くなる傾向があります。
しかし工事の回数などメンテナンスコストを意識して長期的な目線で選ぶことで、工事に必要な合計金額は安くなる場合が多いのでおすすめです。
付帯部のメンテナンス周期は、塗料の耐用年数を目安にするのがおすすめです。
耐用年数を超えているようなら、再塗装を行う必要があります。
耐用年数を超えていなくても、ひび割れや塗料の剥がれがある場合には、交換か修理など適切なメンテナンスを行いましょう。
塗料の耐用年数を確認し、付帯部が劣化していないか日頃からチェックするのがおすすめです。
付帯部の塗装工程は、最初に付帯部表面を整えるケレン作業を行った後、2回以上塗装を行うことが必須です。
ケレン作業を行うことで、汚れや錆などの付着物を落とし、塗料の密着性を向上できます。
また1回の塗装だけでは塗膜が所々透けており、本来の性能を果たすことができません。
そのため、2回塗り以上の塗装を行う業者がほとんどです。
付帯部塗装を1回だけで終わらせようとする業者もあるため、何回塗装を行っているか確認しておくと安心です。
付帯部は雨風の影響を受けやすい部位なので、基本的にどの箇所も劣化しやすいです。
特に雨樋などの塩化ビニル製の製品は、可塑剤(かそざい)という素材を柔らかくする物質が経年により失われ、衝撃によって亀裂や割れが引き起こされやすくなります。
付帯部は、外壁や屋根と比較して見逃されやすいですが、しっかりとメンテナンスを行わないと部品交換など修理代が高くなる可能性もあります。
費用を抑えるためにも、付帯部の劣化具合を日頃からチェックし再塗装などメンテナンスを行うようにしましょう。
アルミ製の窓のサッシや銅製の雨樋、ステンレス製の水切りなどの鉄や板金以外の金属部分は、塗装の優先度は低いです。
またアルミやステンレス、銅は、酸化皮膜を形成するためさびにくい素材であるので、ベランダの手すりや門扉などがアルミでできている場合には塗装を行わない業者もあります。
住宅の美観を整えるために塗装を行いたい方は、付帯部の素材を確認して、塗装の必要性を業者としっかり相談するようにしましょう。
付帯部は一見目立たない部分ではありますが、住宅を守る大切な箇所です。
そのため、塗装を定期的に行いメンテナンスしましょう。
付帯部を塗装する際は、建物の配色バランスを考えつつ、統一感のある色を選ぶとよいです。
また、業者から受け取る見積書の内容もチェックして、費用や工事内容に不明瞭な部分はないか確認するようにしましょう。
安心して工事を任せられる業者を選び、付帯部の塗装を行って大切な住宅の寿命を少しでも延ばすことをおすすめします。
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内野 友和
この記事は私が書いています。
1979年生まれ。一級建築板金技能士。
父・内野国春の元で建築板金の修行を始め、2014年より代表となり家業を受け継ぐ。
20年以上、約5000件の現場経験で培った技術と知識で、建物の屋根・雨樋・板金・外壁工事を通じ、地域の皆様のお役に立てるように努力しております。